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ネコティアスの時事コラム

2011年08月05日

ネコティアス
米国の財政赤字削減の合意は何をもたらすか?
オバマ大統領は自身が言葉にしなかった事を宣言してしまった。

 

 米国と米国民の為と言うよりも、大統領選挙の前に破裂するべく時限地雷を埋め込むことを目的としたような、議会と大統領の債務上限引き上げ交渉がとりあえず妥結した様子である。
 一般的にはこれを持って世界経済を覆っている暗雲を一部取り掃えたという評価なのかと思ったとたんに、早くもその2日後には世界同時株安の雲行きになってきた。
 今回の米国の債務削減問題はこれまでと同様に、実は経済よりも世界政治に与えるインパクトがはるかに大きい。
 債務削減により軍事費を大幅に縮小するとは、米国の立場では公言できないのは当然であり、パネッタ新国防長官も就任以来最初の記者会見で[「台頭する国は常に米国が世界で強固な軍事力を維持するかどうか見定めている」と述べ、厳しい財政事情の中でも抑止力を維持する重要性を訴えた。](時事通信)との事ではあるが、現実的には新たな戦争はもはや出来ないという事は各国が見定めた。

つまり、

[1]  【アジアでの火種】
中国と東南アジア諸国間の南シナ海の海洋権益、北朝鮮の核兵器六カ国協議、ロシアと日本の北方領土問題、韓国と日本の領土問題、中国による台湾の併合
[2]  【アラブでの火種】
パレスチナの国連承認問題、イスラエルの対パレスチナ&対イラン問題、リビアの内戦
[3]  【印パ】
米国の対パキスタン強行政策、インドとパキスタンの依然とした対立
[4]  【アフリカ】
南スーダンを無条件に国家として認めたことによる内戦の激化
幾多の状勢不安国での米国・中国・ロシア・欧州の覇権争い

 などにおいてそれぞれの国が米国の顔色をうかがう事が少なくなっていくという事だ。
 その結果として世界は軍事的により一層不安定になっていかざるを得ない。
 少なくとも米国が、自国の経済問題をうっちゃってでも他国に介入しないと世界の未来が危うい、と考える様になるまでは、今後米国の大規模な軍事介入は起こらないであろう。
 そうなると、これまで米軍の庇護を期待していた戦力は自国で軍備増強を行う必要が生じる。
 そしてそれら諸国の対立国はその事をもってより一層の自国の軍備増強に走ることになる。 
 このような軍拡競争の中でも最も困るのはイスラエルと日本である。

 「アラブの春」のおかげで、イスラエルはもはやアラブで唯一の民主主義国家ではなくなりつつある。(この際そういった民主主義が本物であるか否かは問題とはなっていない) 単にアラブで唯一の民主国家で且つ核武装国家がその軍事力で自国の思うように周辺諸国を脅かしてきたという立ち位置が変化してしまったのである。
 今後イスラエルにに対する包囲網は強くなる一方であろう。そうなればイスラエル国内の過激な強硬派が一か八かの勝負に出る可能性は、和平を真に求める動きの顕在化とともに高まる事になる。

 日本においては軍事増強へ予算を割くことは米国以上に困難であり、FUKUSHIMA−3.11により一部人間が持ち続けている核武装への夢も阻まれつつある。
 朝鮮半島は早晩統一され中国の影響下に置かれる事は時間の問題であり、その時には台湾も中国に実質帰属しており、東南アジアから離れた日本は地理的にも経済的にも孤立する。
 東南アジア諸国はもはや日本を中国への盾とするべく、あてにすることはできない事はっきりと認識し、中国と是々非々でつきあう以外に選択肢は無くなりつつある。 そこで頼りは米国だけとなるのであるが、2020年前後までには、中国の潜水艦隊・空母・ステルス爆撃機・対艦新型ミサイルなどが徐々に実戦配備されていくにともない、もはや米国は日本海と太平洋の西部の制海権と制空権を中国に譲るという決断に至ることになる。
 事ここに至っては、もはや日本にできることはほとんどなく、「中国の高級リゾート化」以外に生き残りの手は無くなるであろう。 本来、中国の影響下にある事に対して歴史的に日本本土のような忌避感を持たないであろう沖縄県民の意をくんで、沖縄から米軍を追い出すという事があれば「中国にとっては願ってもないたなぼた」となる。 日米安全保障条約などはすでに反故になっているという事を速やかに現状認識しなくてはならない。
 事あるごとに米側の高官が「安保条約の適用範囲である事を確認する。」などと確認発言を行わなければならないこと自体が、安保条約反故の証明である。
 すでに米国は北朝鮮問題に興味を失い、東南アジアでの海洋権益も米国が絡めないという意味では、中国がどうしようと米国にとっては大した問題ではないのである。 そんなところで軍事緊張を高めるよりも中国のエネルギー企業に共同出資するほうがよほど利益は大きい。 蛇足であるが、もともと経済以外ではアジアなどに興味のない欧州もユーロ圏の防衛に必死で極東に軍事緊張が起こっても興味は全く持たないであろう。 それにまして自国の資金調達の最も頼りになる同盟国の中国に異を唱えることなどあり得ない。

 アメリカが唱えてきたテロとの戦いや民主主義の輸出などという幻想的な御題目は、オバマ政権になって以降はより一層「虚ろな言葉だけのもの」になった、という認識が世界中に広まり始めた。 
 オサマ・ビン・ラーディンの唐突な殺害と、その実務的な存在そのものに意見が分かれるアルカイダに対する勝利宣言、イラクに続いてアフガ二スタンでの勝利宣言と大急ぎの撤退は、西側諸国から見れば「米国への信頼の低下」であり対抗する諸国から見れば「米国恐れるに足らず」ということである。

 ノルウェーの無差別殺戮への西側諸国の対応はただ「許されない」と言うだけで、白人が起こした事件をどのように評価していいのかまったく分からないのである。 あのような殺戮はイスラム原理主義者とそのシンパのみが起こすものでなくてはならず、その事によってのみ軍事行動を正当化してきたのであった。
 白人が同じことをやった時の対応準備は想定外であった。 米国でしばしば起こる、「頭のへんな人間の無差別銃撃」で済ませることができればよかったのであろうが、ニュースの第一報が「イスラム教徒をノルウェーから追い出すためのテロ攻撃」となってしまったものであるから、その後の評価に戸惑うばかりということであろう。この事実を見ても西側諸国にはもはや想定外の軍事行動に対する対応への強固な意志とバックボーンをなす哲学がないということの証左である。

 自由主義陣営であるはずの先進国で盗聴や人道に対する罪がはびこり、世界経済の崩壊が正義の軍隊を邪悪な大量殺戮集団に変える事を可能にするとすれば、世界経済の大きな後退と世界中での無秩序な軍事対立が同時に起こった時には、「資本主義から新たなルールの再構築の期間」では済まなくなる事もあり得る。
 今後予想される世界中での無秩序な軍事行動が本当に次々と起きた時の、その後に来る事ははたして何であろうか。
 「米国はもはや自由のために他国で戦争をする金も意思もない」とオバマが暗に認めた米国とその同盟国が「相手が米国とその同盟国ではないならば、軍事費の余りかからない経済的な抑止力」をその回答にしないことを心から神に祈る。
 今こそ人類は危機を未然に防ぐために必死で努力することを求められている。

 中でも、日本人こそそうすべきである。 事が起こった後に「しようがない」と諦めることは間違っていないかもしれないが、事が起こらないように努力しないことは明らかに間違っている。ましてや哲学なくして存在する現状を変えないがためだけに理屈をこねることはもはや罪である。我々日本人はこれまでの、「何事にも2つの見方があるから簡単には断言できない」という無策の考えが、さも高尚な(仏教に深く影響された)日本人独特の哲学であるかのような思考停止は捨てなくてはならない。
 そのような事なかれ主義が、近代史においては「自爆テロ」(カミカゼ)も「化学兵器テロ」(地下鉄サリン)も日本人を最初の実行者にしたのである。
 なぜ、核兵器も持たない日本だけが、一世紀の間に2回も世界に類を見ない核被爆をしなくてはならなかったのか、の理由と必然性を日本人の心に中にこそ見つける努力なくしては、またしても繰り返される事になるであろう。
 その瞬間に日本人は「核兵器を保有しておくのだった!」と思うのか、あるいは「あきらめるしかない」と思うのだろうか。

 

以 上
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